『真夜中の博物館』帯文は藤野可織さん!

「増殖することをやめないこの博物館は
 じきに白昼をも飲み込んでしまうだろう。」
                   ——藤野可織


 本当に私は幸せ者です。この帯文以上のコメントがあるでしょうか。



 藤野さんは美と恐怖のあいだを描く小説家ということで、ホラー好きなところも美学出身のところも、私と共通しています。そんなわけで折りに触れ公私ともども、藤野さんとはいろんな場所でご一緒してきました。私が藤野さんにインタビューしたり、一緒にホラー映画を見に行ったり、私の授業にゲスト講師としてお迎えしたり。いつ頃初めてお会いしたのか記憶が曖昧なのですが、2011年か12年あたりだったような気がします。下記は私が取材、構成したインタビューで、2作目の『パトロネ』が刊行された頃のものです。

藤野可織インタビュー
http://www.clippinjam.com/volume_65/cf_top.html


 昨年刊行された『爪と目』で芥川賞をお獲りになった藤野さんですが、私が一番好きな作品集は『おはなしして子ちゃん』(2013)。ティム・バートンにも通じるような、毒々しくてポップ、色彩鮮やかでグロテスクな世界が展開される、百花繚乱の作品集です。音楽でいえばザ・キュアーみたいな感じかな。アレンジはポップだけどよく聞くと芋虫娘とか餓鬼の歌を歌ってる、みたいな感じです。

『おはなしして子ちゃん』
http://www.amazon.co.jp/dp/4062186306


 最新作の『ファイナルガール』(2014)もすっごく面白いです。『おはなしして子ちゃん』がティム・バートンだとすると『ファイナルガール』はロバート・ロドリゲスっぽい感じ。流血ドバドバだけれど妙にスカッとするというか「流血マシマシ、手足タワー盛りで!」って感じです。短編集なんですがうっすらと一貫したテーマがあって、誰かが誰かを「守る」という構図が頻繁に出てくる。これまでのどっちかというとスタティックな藤野文学にはなかったような、新しいモチーフが出ています。


 『爪と目』以降の藤野さんは凄まじい勢いでリリースが続いていて、作品の方向性も毎回驚くほど変わっています。こうしたノリに乗っている時期の作家の言葉をまとった本を出せたことは、本当に私にとって大きな喜びです。藤野さん、本当にありがとう!

樋口ヒロユキ
『真夜中の博物館 美と幻想のヴンダーカンマー』
アトリエサード刊、予価2500円+税
5月上旬刊行予定
http://www.kcc.zaq.ne.jp/dfyji500/shincho.html