京都市立芸大の卒展:佐藤健さん

 京都市立芸大の卒展見てきました。染織2回の佐藤健さんの作品、タイトルは《41.8秒と90,000キロメートル》。モノクロ写真にピンを刺して赤い糸を張り巡らせたもの。9万キロというのはたぶん体中の血管の長さの合計だと思うのですが、41.8秒ってなんのことなのだろう。非常にシンプルでわかりやすい作品ですが、ふだんどんな作品作っておられるのか興味が湧きます。



京都市立芸大の卒展:小林玲衣香さん

京都市立芸大、陶磁器4回の小林玲衣香さんの作品。タイトルは《遠くはなれてそばにいて》。タイトルから察するに、ある種のヴァニタスではないかと思うのですが、どうでしょうか。繊細な美しさと、どこかしら不気味で陰鬱な感じの両方があって好きです。陶磁器のフラジャイルな感じが題材とぴったりマッチした感じがします。




京都市立芸大の卒展:宮越裕子さん

京都市立芸大、版画院1回の宮越裕子さんの作品。タイトルは《lace004》。パッと見たところ、レースのテーブルクロスの上に置かれた薔薇、に見えるのですが、実は……という作品。ちょっとレディー・ガガを連想させますね。違う作品も見てみたいです。


宮越裕子さんのフェースブック
http://www.facebook.com/hiroko.miyakoshi

京都市立芸大の卒展:中野友里香さん

京都市立芸大、油画2回の中野友里香さんの作品。タイトルは《MANDARA》。見たまんま曼陀羅の絵なんですが、よく見るとあらカワイイ。しかもさらに目を凝らすと、あ、このポーズは! ……という作品。私の好みから言うと、もう少し描線に美しさが欲しいなと思いますが、でも面白いです。


京都市立芸大の卒展:吉田芙希子さん

京都市立芸大、油画院2回の吉田芙希子さんの作品。関西のアート好きならもう吉田さんはおなじみではないでしょうか。イケメンをモチーフにしたレリーフを作り続けている吉田さん。学内では既に大規模な二人展やグループ展に参加しているので、早く個展がみたいですね。しかしこれ、3枚目のモデルは、ひょっとしてあの人?



京都市立芸大の卒展:迎英里子さん

京都市立芸大、彫刻科の迎英里子さんの作品(学年メモするの忘れてました、すいません)。圧搾空気で動く彫刻なのですが、面白いのは植物の会家のメカニズムにヒントを得ているところ。大きなボールの間に小さなボールが挟まった構造なのですが、この小さなボールに空気が入ると、花が開くようにパラッと開く。実際の植物の開花では、小さな細胞が「膨らむ」のでなく「増殖する」ことによって開くらしいのですが、そこまでの再現は無理だったのでこうなったとか。いろんな分野の方に見て欲しいです。エンジニアとか科学者とか。




迎英里子さんのフェースブック
http://www.facebook.com/eriko.mukai.3

京都市立芸大の卒展:山下拓也さん

京都市立芸大、彫刻院2回の山下拓也さんの作品。これ、何が面白いのかというと、ぐるぐる回ってるんです。しかもモーターとか動力は一切使ってなくて、勝手に回ったり止まったりしている。なぜか。理屈は簡単、実は手前にエアコンの吹き出し口があって、その風でクルクル回っている。こんな巨大で重そうなものが、単にエアコンの風に吹かれただけで回ってるという奇妙さ。設置する場所から逆算して作品を作ることが多いそうです。



山下さんはカラス天狗のお面みたいな紙製の帽子の作品をこれまであちこちに出しておられて、関西のアートファンだと、そちらの作品をご覧になった方も多いのではないかと思います。ポートフォリオも見せてもらったのですが、もうアイデアの洪水というか、一つの作品ごとにまったくコンセプトが違うので、見てるこっちの頭が混乱してくるくらいです。何も説明を聞かなければ、グループ展の記録と思うのじゃないでしょうか。

そんなわけで非常に優れた才能だと思うのですが、なんと所属ギャラリーなどは決まっていない、とのこと。この才能を埋もれさせるのはもったいないなあ……。

山下拓也さんのフェースブック
http://www.facebook.com/takuya.yamashita.927

京都市立芸大の卒展:新平誠洙さん

京都市立芸大、油画院1回の新平誠洙さんの作品。これ、パッと見ただけでは何がなんだかよくわかんないと思うのですが、じーっと見てください。

8枚組になっていて、8枚全体の図柄とは別に、1枚1枚に心霊写真みたいに別の図柄が描かれてるの、おわかりいただけるでしょうか。しかもよく見ると3層の図柄が見えるんですが……。わかりにくいと思うので、一部分を拡大してご説明しましょう。下の画像を見てください。

頭に包帯を巻いた女性の顔ははっきり見えてると思うのですが、これとは別にプールに飛び込もうとしてる太った中年男性の姿が見えるの、気がつきましたか。それと、その男の頭のうしろに、お釈迦様の頭にある輪っかみたいなのが見えると思うんですが、これが実はテニスのラケットなんですよ。もう一回全体像を見てください。

ラケットを持ってたぶんボールに飛びつこうとしてると思われる人物の姿、わかりますかね。フィルムカメラ二重写し多重露光の要領で、3層の図柄が描きこまれた絵画なんですよ。で、テニスとか水泳とかいった健康的な場面に二重写しのように、下の画像みたいなちょっと薄気味悪いものが写り込んでいる。

カーテン越しにこっちを覗いているこの女性は一体なんなんでしょう。「健康/病気」というイメージがグラグラしてくるような不気味さを持った作品で、印象としてはちょっと地味なのですが、ものすごく気になる作品です。タッチとかは全然違うのですが、ちょっとフランシス・ベーコンを思い出しちゃう。一体何を考えてるのか、機会があればお伺いしてみたい気がします。

京都市立芸大の卒展

下はオマケ、最近の注目株、日本画の服部しほりさんの作品です。服部さんは来月個展があるので、そちらを楽しみにしています。

このほか、今年は高木智子さんが学内展で個展形式の展示をしていて、かなり見応えがありました。今年はおせちだけじゃなく街角の風景にも取り組んでいて、ちょっと広がりが見えてきた気がします。シンメトリーということにこだわってるのかな、という印象を受けたのですが、どうでしょうか。もっと作品を見てみたい方です。

http://d.hatena.ne.jp/higuchi1967/20120214/1329150598

あとは伊勢川泰敬さんの作品がよくできていました。