京都市立芸大の卒展:宮越裕子さん
京都市立芸大の卒展:迎英里子さん
京都市立芸大の卒展:山下拓也さん
京都市立芸大、彫刻院2回の山下拓也さんの作品。これ、何が面白いのかというと、ぐるぐる回ってるんです。しかもモーターとか動力は一切使ってなくて、勝手に回ったり止まったりしている。なぜか。理屈は簡単、実は手前にエアコンの吹き出し口があって、その風でクルクル回っている。こんな巨大で重そうなものが、単にエアコンの風に吹かれただけで回ってるという奇妙さ。設置する場所から逆算して作品を作ることが多いそうです。
山下さんはカラス天狗のお面みたいな紙製の帽子の作品をこれまであちこちに出しておられて、関西のアートファンだと、そちらの作品をご覧になった方も多いのではないかと思います。ポートフォリオも見せてもらったのですが、もうアイデアの洪水というか、一つの作品ごとにまったくコンセプトが違うので、見てるこっちの頭が混乱してくるくらいです。何も説明を聞かなければ、グループ展の記録と思うのじゃないでしょうか。
そんなわけで非常に優れた才能だと思うのですが、なんと所属ギャラリーなどは決まっていない、とのこと。この才能を埋もれさせるのはもったいないなあ……。
京都市立芸大の卒展:新平誠洙さん
京都市立芸大、油画院1回の新平誠洙さんの作品。これ、パッと見ただけでは何がなんだかよくわかんないと思うのですが、じーっと見てください。
8枚組になっていて、8枚全体の図柄とは別に、1枚1枚に心霊写真みたいに別の図柄が描かれてるの、おわかりいただけるでしょうか。しかもよく見ると3層の図柄が見えるんですが……。わかりにくいと思うので、一部分を拡大してご説明しましょう。下の画像を見てください。
頭に包帯を巻いた女性の顔ははっきり見えてると思うのですが、これとは別にプールに飛び込もうとしてる太った中年男性の姿が見えるの、気がつきましたか。それと、その男の頭のうしろに、お釈迦様の頭にある輪っかみたいなのが見えると思うんですが、これが実はテニスのラケットなんですよ。もう一回全体像を見てください。
ラケットを持ってたぶんボールに飛びつこうとしてると思われる人物の姿、わかりますかね。フィルムカメラの二重写し、多重露光の要領で、3層の図柄が描きこまれた絵画なんですよ。で、テニスとか水泳とかいった健康的な場面に二重写しのように、下の画像みたいなちょっと薄気味悪いものが写り込んでいる。
カーテン越しにこっちを覗いているこの女性は一体なんなんでしょう。「健康/病気」というイメージがグラグラしてくるような不気味さを持った作品で、印象としてはちょっと地味なのですが、ものすごく気になる作品です。タッチとかは全然違うのですが、ちょっとフランシス・ベーコンを思い出しちゃう。一体何を考えてるのか、機会があればお伺いしてみたい気がします。
京都市立芸大の卒展
下はオマケ、最近の注目株、日本画の服部しほりさんの作品です。服部さんは来月個展があるので、そちらを楽しみにしています。
このほか、今年は高木智子さんが学内展で個展形式の展示をしていて、かなり見応えがありました。今年はおせちだけじゃなく街角の風景にも取り組んでいて、ちょっと広がりが見えてきた気がします。シンメトリーということにこだわってるのかな、という印象を受けたのですが、どうでしょうか。もっと作品を見てみたい方です。
http://d.hatena.ne.jp/higuchi1967/20120214/1329150598
あとは伊勢川泰敬さんの作品がよくできていました。