鈴木崇、カトリン・パウル、SZ @ The third gallery Aya

「sense perception/感覚による認識」

鈴木崇、カトリン・パウルという二人の写真家、そしてSZという4人組グループの、三組によるグループ展なのですが、私も含めて観客に一番ウケていたのはSZ。指定された椅子に座ると、目の前にあるガラスブロックに映像が現れて、次々に変化していく。喋ったり笑ったりすると、その変化は激しくなる。これ、実は事前に録画した映像が映っているのではなく、鑑賞者の変化をセンサーで捉えて、その変化を視覚化しているのだというんですね。つまり映像そのものが作品なのではなくて、その映像を作り出すプログラムが作品なのです。

http://www.thethirdgalleryaya.com/exhibitions/

何に反応しているのですか、と問うと、鑑賞者の呼吸に反応しているという。鑑賞者の首筋あたりにセンサーが用意されていて、どうやら背中の筋電位変化を捉えているらしい。通常の呼吸だとゆっくり変化し、もぞもぞ動いたり呼吸したりすると変化のスピードも速くなるのですね。もともとは医療関係のプログラムとして開発されたらしいのですけれども、それをアートに応用した作品なのだそうです。

この手のインタラクティブな変化をするメディアアート作品って結構あって、三上晴子さんとか藤本隆行さんとかがそれにあたるわけですが、ほとんどの場合、観客ないしはパフォーマーの、意識的なアクションが変化のトリガーを引くという原理で設計されている。結局その根本的な原理は、80年代のローリー・アンダーソンの時代からさして変わっていないんですね。

http://d.hatena.ne.jp/DragonTree/20080724/1217385713

ところがこの作品の場合、観客の不随意運動がトリガーになっている、というところが面白い。なんとなく自分の無意識みたいなものが表れちゃうんじゃないか、という妙な不安に囚われるわけですね。「心理状態とは関係なくて、呼吸に反応しているだけですよ」というんだけれど、やっぱり妙な不安が残る。そこが面白いのだと思います。

鈴木崇はモノの影を撮った作品で、ちょっと杉本博司の作品を彷彿とさせるもの。カトリン・パウルは連続ストロボで蛾の飛行を撮った作品で、実際の被写体は昆虫なのに、連続しているために木の枝のように見える。いずれも光と知覚を巡る問いを中心にした作品で、グループ展としても面白い構成になっていました。会場のThe third gallery Ayaは写真に強いギャラリーで、石内都澤田知子、鬼界弘雄などを抱えるギャラリー。今回も写真の作家が二人出品していますが、SZのような本格的なメディアアート作家を扱うのはこれが初めてだそうです。

SZは砥綿正之(京都市立芸術大学教授)、森公一(同志社女子大学教授)の二人を中心に、真下武久、前田剛志が共同作業で作るグループだそうで、映像やプログラムの出来もさることながら、展示空間そのものの緊張感のある設営もイカしてるな、と思いました。名前もこれ、たぶんロラン・バルトの本から採ったものですよね。80年代的でクールでカッコいいユニットだと思いました。13日まで。