松原正武「虚実」ギャラリー開
いま神戸元町のギャラリー開で、松原正武さんの個展「虚実」をやっています。これは非常に複雑な手順を経て作られた作品で、まず最初に壁やペンキのひび割れをモノクロネガで撮る。次にカラー印画紙にプリントして、それを少しずつ削る。すると印画紙にはシアン(青)、マゼンタ(赤)、イエロー(黄)の三つの色の層があるので、削ったところからそれが出てくる、というわけです。
一気に強い力で削ってしまうと、下の赤の層まで出てきてしまう。だから青い層だけ露出させるのは、結構至難の業だそうです。たとえば下の作品は、シアンの層だけが出るように削りだしたもの。写真の上から塗ったものではなくて、印画紙自体に埋め込まれていたものなんですね。
この作業を繰り返して写真部分を完成させ、表面に凹凸の加工を施した特殊紙の上に貼り込んで完成。ただし、この特殊紙の上にもインクジェットプリントで、ひび割れの写真がプリントされています。このように松原さんの作品では、写真を削りだしたことで生まれる色味の違いや、紙自体の凹凸と、プリントされた凹凸が混在しています。まさに虚実皮膜で、その皮膜は紙の厚さ一枚分もない、というわけです。
松原さんの作品は非常にミニマルな印象ですが、写真という現象の持っている物質的な可能性を、非常に深く追求していると思います。この機械に是非ご覧になってください。場所はいま神戸ではオシャレなカフェや雑貨店が集まっているので人気の栄町。休日には是非。
2010.11.20-12.3
松原正武展 MATSUBARA Masatake −虚実−
ギャラリー開 GALLERY KAI
http://www.ac.auone-net.jp/~kai-kobe/index.html