私は長門有希ちゃん萌えです。
そうだった。学生から「ハルヒ関連のツイートしてくれ」とせっつかれていたのであった。しかしネタバレになるといかんしな。うーん、無難なところで誰に萌えるかみたいな話でもしようか。私は長門有希ちゃん萌えです。メガネもいいけど、外してからの方が好きかな。
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いまを去ること四半世紀前、私がリアル厨房だった頃、長門さんみたいな雰囲気の女の子がクラスにいたんですよね。顔はあまり似てないのですが、読書好きで極端におとなしく、何を話しかけてもほとんど返事すらしない。で、何考えてんだかよくわからないんですね。名前は確かYさんといったと思うのだけど、とにかく色が白くて無口でおとなしいので、きっと勉強好きの真面目な人なんだろうと思ってたら、ある日彼女とばったり映画館で出くわした。で、そのときかかってた映画がこれ。
この映画はピンクフロイドというバンドの「The Wall」ってアルバムをミュージカル仕立てにしたもの。ピンクフロイドのボーカルをモデルにした主人公が、管理教育への鬱屈やファシズムへの傾倒、心理的な「壁」の構築を告白したカルト的な映画なんだよな。ちなみに、さっき調べたら、このアニメを担当したのはジェラルド・スカーフという人らしい。推測だけど、いまベネチアに出てらっしゃる束芋さんは、このアニメからかなり影響を受けたんじゃないかな。
で、Yさんの話に戻ると、まさかこんな強烈な映画で彼女と出くわすなんて思ってもいなかったので、私としては仰天したわけです。大人同士だったらアリかなとは思うけど、中学生で両方これ見てるって相当だもんね。で、一体この人、内面で何を考えてるんだろう、と思ったわけですよ。長門さんのイメージって、そんなYさんと被るんですよね。一見ものすごく真面目で口べたでおとなしいけど、内面にはグロテスクなほどの怒りとか激しい感情が渦巻いている。普通の人は当たり障りのない表現でそれを出して均衡を図るんだけど、不器用でそれができない。
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長門さんの場合は異世界でヒューマノイドやカマドウマと闘うわけだけれど、あいにく我々の日常にはそんな異世界への入り口はないわけで、それに近似したものを探すしかない。そうして彼女が探し当てたのが、たとえばピンクフロイドの「The Wall」だったんじゃないか。もちろん自分にもそういう面があったから、同じ映画を見に行ってるわけで、やっぱりそういう異世界志向というか、現世では満たされない感情の暴発みたいなのは、自分も抱えてたんだと思う。で、自分もやっぱり表面的には、ごくごくおとなしい子どもだった。
そいじゃ似た者どうし仲良くなったのかというと、その後も廊下ですれ違ったら黙礼するだけ、みたいな感じのつきあいで、Yさんと私の関係は終わるんですよ。一緒にどっか行ったりとか、休み時間に喋ったりとか一切なし。両方とも感情表出が異常に苦手だったんだよな。自分やYさんみたいな人間は、その頃は圧倒的に少数派で、40人クラスに一人いれば多い方じゃなかったかと思う。ところがある時期からラノベやアニメなんかに、自分たちにすごく良く似たメンタリティーのキャラクターが、ぽつぽつと出てくるようになった。
たとえば長門さんはその典型だろうし、乙一さんの『GOTH』に出てくる「僕」とか「森野夜」とかもそうかもしれない。機本伸司さんの『神様のパズル』に出てくる「穂瑞沙羅華」なんかも、ちょっとそういう傾向がある。感情表現が苦手で表情に乏しいけど異世界志向がある、こういう登場人物の系譜、どう名付けたら良いんだろう。無表情系? いや「仮面系」とでも言えばいいか。異世界と深層心理でがっちり結びついてはいるが、けれども昔のロマン派みたいに異世界に耽溺はせず、仮面を被って無表情に日常をやり過ごしているキャラ。
そんなわけで、自分はこういう長門さんみたいな、仮面系のキャラクターに萌えるんですよね。そういう人、たぶんいま増えてるから、こういうキャラクターが多いのじゃないかな。うん、長門さん、自分は好きだな。