加藤泉「はるかなる視線」(心斎橋six)
昨日やっと加藤泉さんお展覧会「はるかなる眼差し」(心斎橋six)を見てきました。最初に私が加藤さんの作品を見たのは、確か2007年のMOTアニュアルだったと思います。そのときに作品から感じた得も言われぬ不気味な印象は、いまでも強く私の胸に残っています。胎児のような、グロテスクで不定形でぶよぶよしたそのかたち。いま思い出しても不気味です。
しかし大変不思議なことに、今回のsixでの展示からは、かつて感じた病的な印象がやや後退し、むしろ生命力の豊かさのようなものを強く感じてしまいました。どうしてなんでしょうかね? こちらの目が加藤さんの作品の異様さに慣れてしまったのか、展示の形式のせいなのか。削りたての木材の匂いのせいなのか、それとも作品自体が何か変わったのか……。原因はよくわかりませんが、胎児のグロテスクな面よりも、生き生きとした生命感、豊かに芽吹く力、鉱物の透明感のある輝きの方が、私の目には入ってきました。とても不思議な体験で、心地よい時間を過ごすことができました。
今回展示されているのは絵画と彫刻の両方ですが、このうち彫刻作品は、いずれもスフィンクスのような髪型をした胎児たちです。それが立ってたりベッドに寝てたり、シンクロみたいに足を上げてたりするのです。いにしえのエジプトのスフィンクスは「朝は四本足、昼は二本足、夜は三本足の生き物とは何か」という有名な謎を出します。もちろん答は「人間」です。しかし、加藤さんのスフィンクスが出している謎の答は、一体何なのでしょうか?
スフィンクスの謎を解いたオイディプスは、孤児の身の上から王となり、美しい姫を娶りますが、同時に父殺しと母子相姦の罪を犯してしまいます。スフィンクスの投げかけた謎は「解いてはならない謎だった」と言えます。加藤さんの作品に秘められた謎も、もしかすると解かない方が良い謎なのでしょうか? 展覧会場でご自身の目で確かめてみてください。
加藤 泉『はるかなる視線』
7月9日(土)〜 9月11日(日)
アートスペース Six
大阪府大阪市中央区南船場3-12-22 心斎橋フジビル 2F
tel.06-6258-3315
開館12:00〜19:00 月休(月曜が祝日の場合は営業)
https://bitly.com/pNNQwp