伝書鳩プロジェクト
昨日は「伝書鳩プロジェクト」という、大阪市の文化行事にスピーカーとして出席してきました。ゲストは私の他に美術作家の西沢みゆきさんと、アートプロデューサーの三村康仁さん。ご自身の生い立ちからアートの必然性、重要性をお話しになった西沢さん、近年での香川県でのアーティスト育成についてお話しになった三村康仁さん。いずれのスピーチも大変有意義なものでした。本日も続きがあるようなので、ご興味をお持ちの方は是非。
三人の座談では「具体美術協会」という、関西アート界における最大の地域資源をどう活かすかという話になりました。西沢さんは具体の嶋本省三さんのお弟子さん、私は具体のお膝元の芦屋在住ということで、二人は具体にゆかりが深いのですが、そんな具体の作品は近年、ヨーロッパで高い評価を受け、どんどん流出してしまっている。かつて浮世絵がどんどん海外に流出したのと同じ悲劇を、また日本は繰り返そうとしてるわけですね。
ちなみに来場者に「具体って知ってますか」と尋ねたところ、手を上げた人はパラパラ。いちおうアートを主題にする催しの会場で聞いてこれなのですから、これじゃあちょっと寂しすぎる。具体美術協会はパフォーマンスやインスタレーションを50年代からやっていた人々で、文句なしに世界でいちばん速い試みを見せた人々。浮世絵は複製品だけど、具体は一点モノで流出してしまえばそれきり。いまなんとかしなくちゃいけないのです。
具体美術協会
bit.ly/ybV6X0
いっぽう三村さんとは香川県のアートの蓄積と盛り上がりぶりの話で楽しみました。香川県には金比羅山というのがあって、ここには伊藤若冲や円山応挙の時代から連綿と美術のコレクションを続けてきた私設コレクションがある。つまりそもそもアートへの感度が高い地域なんですね。そこに近年では瀬戸内芸術祭という大規模なアートフェスティバルが開催されている。
これは瀬戸内の島々を船でめぐってアートを見せるというもので、招待作家も世界のトップクラスを行く人ばかりです。で、企画側の予測をはるかに上回る、なんと90万人を動員した。ただしそれだけに問題があって、見る分には贅沢なものをいっぱい見ているが、さて地元の人が自分で何か表現しようと思うと、どうしていいのかわからない。そこでアートマネジメント講座やアーティストインレジデンスを香川県に持って行ったのが三村さんというわけ。
香川県アートマネジメント講座
http://www.news2u.net/releases/86155
トップクラスの大物作家は見られる、地域の作家も見られる、だが真ん中のステップアップしていく部分がない。そういう状況は大阪も同じで、しかも関西でいちばん顕著に「中抜け」現象があるのが大阪です。すぐお隣の兵庫県にも京都府にも新人アーティストの育成を行う施設がありますが、大阪府はいまそこが抜けている。府の現代美術センターは休館中、移転予定先は昭和13年築の場所で、収蔵機能に不安が残る状態です。
結果、巨大な国立国際美術館と私設のギャラリーだけがあり、府の美術館はなく、市の美術館は古典美術しか扱わない地域になっている。これでは大阪ではアーティストは育たないし、アートに無関心な地域だと思われてしまう。で、やっぱり大阪市立近代美術館が欲しい、となる。私自身はこの美術館についての提言を行ったのですが、ちょっと長くなり過ぎたので、いったんここで切ります。続きは明日にでも。