アトリエサード『TH』最新刊 「もの派」から「モノ派」へ

 いつもお世話になっているアトリエサード『TH』最新刊がアマゾンに並んだので、宣伝をちょっと載せておきます。まずは曾我蕭白の描いた虫魚禽獣を球体関節人形にした作家、福長千紗をレコメン枠で紹介。もう一つレコメン枠では「榎忠展 美術館を野生化する」を紹介しています。


 特集ページは「奇想の音楽」。溺れたエビの検死報告書、ザ・レジデンツThe CURE、Japan、渋さ知らズ、アーバン・サックス、ジョン・ゾーン山川冬樹立花ハジメなど。ある程度以上の音楽好きなら普通に知ってるラインナップかも。


 連載の「美のパルマコン」はちょっと変わった構成になっていて、まずは神戸芸術工科大学で再制作された、関根伸夫さんの伝説的作品《位相—大地》の話。それに関連する作品として、なんと銀閣寺を紹介しています。さらにこれらと比較対照する形で、国立国際美術館で開催された若手インスタ作家中心のグループ展「世界制作の方法」を紹介。国立国際「世界制作の方法」は大変出品者の多い作品だったので、金氏徹平さんとクワクボリョウタさんを中心にしました。


 ちょっとだけネタバレして補足しておくと、関根伸夫さんの《位相—大地》は、ご存知70年代の美術ムーブメント「もの派」のきっかけになった伝説的作品。いっぽう国立国際美術館の「世界制作の方法」は、ネルソン・グッドマンの同名書に基づく展覧会。いっけん両者は世代も違えば人脈も異なるもので、何の接点もないように見える。けれども両者はある一点で共通している。いずれも既存の「もの」をそのまま作品化してしまう点です。


 ただし違いももちろんある。もの派は自然物を使い、「世界制作」の作家たちは人工物、それも「商品」となったものを使う。自然物を作品化した70年代のもの派に対して、既存の商品を作品化するゼロ年代の作家たちを、私は仮にここで「モノ派」と呼んでいます。つまり現代美術は約40年という時間をかけて「もの派」から「モノ派」へと変貌を遂げていったわけです。それではなぜ「もの派」から「モノ派」への転換は起こったのか。「もの派」と「モノ派」がそれぞれ背負った時代の価値観はどのようなものなのか。そのあたりを今回の記事では考えています。


 そんなわけで、いずれも非常に興味深い作品ばかり。是非お買い求めになってください。もちろん私のページ以外も面白いですよ。

アトリエサード『TH』最新刊
http://www.amazon.co.jp/dp/4883751368