京都市立芸術大学の卒展その1

 面白い作品が多かったので2回に分けて。まずはその1。今年は「日本」をテーマにした作品に面白いものが多かったような気がします。奇想、オタク、日本性といった傾向はずいぶん以前からあったとは思うのですが、今年は自分がピンと来る人が多かったです。




 油画修士2年、クリス・カーワンさんの作品。上は舌切り雀を題材にしたもの、下はインドの女神カーリーを題材にしたもの。いずれも横尾忠則さんの画家転向前後の作風を彷彿とさせ、題材とのミスマッチを面白く感じました。


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 漆工修士2年、萩原佳奈さんの作品。ものすごく小さな貝に、大変な密度で加工をしてあります。理屈ぬきで美しい。京都文化博物館内のギャラリー「アートン」で、昨年10月に個展をされていたようですね。

@bunpaku_arton
京都市立芸術大学 大学院生 「萩原佳奈 展」たくさんの方が見てくださっています。漆工の作品で。


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 油画2年生、伊勢川泰敬さんの作品。何が面白いかというと、もちろん作品そのものも面白いのですが、タイトルが面白い。《日本文化論2.03》。何やら壮大な連作の構想がありそうな予感がして、つい次回作に期待したくなります。機会があればポートフォリオ見てみたいですね。


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 修士1年の服部しほりさんの作品。実物はものすごく良い作品なのですが、なんとも私の写真の腕前がヘタクソ過ぎて、あまり良さが伝わりません。是非ご本人のサイトをご覧ください。

服部しほり日本画 服部宇宙
http://shihori2hattoori.web.fc2.com/frame.html


 これもタイトルがすごくよくて《この国の先を貴様と論じて》というものです。こちらは「論」から一歩先に進んで、志(こころざし)のようなものが感じられますね。でもなぜか論じあっているのは、全裸の男と亀です。「論じあうに足る相手は、もう亀くらいしかいない」という皮肉でしょうか。それにしても隆々とした亀の首の質感はどうでしょう。国士気取りの人々が帯びる、ファロセントリズムへの皮肉でしょうか。いろんなことを考えさせられます。


 以前にもこの方の作品は「Colors of KCUA 2011 〜京都市立芸術大学芸術学研究室による総合選抜展〜」(@KCUAギャラリー)で見たことがあるのですが、今回は本当に面白いな、と思いました。既に実にたくさんの場所でグループ展などに出品しておられるようです。今後がとても楽しみな作家さんです。


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 こちらは日本画4回、高石瑞季さんの作品。こうした作品にありがちなオリエンタリズムがなく、非常に等身大で飾らない印象に好感を持ちました。今後が楽しみです。