兵庫県立美術館「美術をみる8つのポイント」

 兵庫県立美術館のコレクション展「美術を見る8つのポイント」のアクセスがわりと好評でちょっと驚き。近代美術からパリパリの現代美術まで手広く紹介するコレクション展なんですが、おおまかな見方とともに示されるので初心者でもウェルカムな展覧会。もちろんマニアの方々が見ても唸らされる展示や珍品がいっぱい。非常に面白いです。



 たとえば、美術の中には社会的事件を扱ったものがある。その作品が制作された社会背景を知っておくことは大事で、下の作品なんかはその典型。一見した所単なる硝子ビンの展示に見えるけど、中に入っているのは写真のフィルム。震災直後の被災地と新聞記事を撮った2枚の写真のネガ。中川政昭さんの《DIES IRAE》(「怒りの日」の意)という作品です。



 コンセプトを示すのも美術の重要な仕事ですが、コンセプトを示すのは別に理屈っぽい方法ばかりとは限らない。下は植松圭二さんの写真連作《水平の場》《垂直の場》《直角の場》の三連作。ドアのところに植松さん自身が水平にカンヌキ状にふさいでるの、見えますかね。水平垂直に直角という概念を、自分自身の体で示した。植松さんは現在では金属を使った公共彫刻で有名ですが、昔はこんな体当たりな作品を作ってたんですね。



 こういう抽象的作品以外にも、当然ながら具象作品はあるわけで、特にそうした具象作品の中から、トリミングに注目して集めた展示も同展では展示されています。下は桜井忠剛という方の《能道具図》(明治末〜大正初期)という作品。当時はまだまだ西洋建築は珍しい時代で、日本家屋に飾るをこと前提に描かれたもので、扁額のように鴨居の上などに飾っていたものらしい。タッチもちょっと独特というか、17世紀頃の西洋におけるヴァニタス(虚しさの絵画)を思わせる、暗い印象のある静物画です。写真ヘタクソでスマソ。実物是非見てください。



 で、これが非常に面白い展示。手前の立体はパリパリのコンテンポラリー、榎忠さんの《薬莢》(1991)。奥の方は1950年代以降に活躍した「具体美術協会」の人たちの作品で、左が元永定正さん《作品》(1961)、右が金山明さん《作品》(1957)。制作年には30年もの開きがあるし、人脈的にも重なっていないのですが、行為の痕跡を示すという意味では非常に近いものがある。この部屋は具体の作品ばかり集められていて、その中心に榎さんの作品がある。ちょっと壮観です。



 具体は世界で初めてパフォーマンスをやったことで有名な集団で、こうした絵画も何かの行為の痕跡として制作されている。榎さんは大砲を発射したり機関銃を集団で運んだりするパフォーマンスで有名で、ここでも空の薬莢を集める制作プロセス自体が作品化している。これはほんとにお見事な展示で、日本人はパラパラとしかいないのに、外国人客がたくさんお見えになってました。いろんな意味で必見、是非お越しを。

兵庫県立美術館「美術をみる8つのポイント」
2012年3月24日(土)〜2012年6月24日(日)
http://www.artm.pref.hyogo.jp/exhibition/j_1203/index.html