感じる服 考える服: 東京ファッションの現在形

 神戸ファッション美術館で展示中の「感じる服 考える服: 東京ファッションの現在形」の模様、かいつまんでお知らせします。基本私はゴシック&ロリータの文脈の服が好きなので、その文脈に引っかかったものに絞ってご紹介します。


 まずはエイチ・ナオト/h.NAOTO(廣岡直人)。やっぱ好きです。特にすごいなあと思ったのは背中に「バッスル」と呼ばれる装飾をつけた服。もともとバッスルというのはスカートの飾りで、お尻を誇張するものとして19世紀中頃に登場した装飾なのですが、それを背中につけてしまったわけですね。人体のフォルムを完全に崩しているわけですが、不思議とバランスが取れている。服って一体なんなんだろうと考えさせられる服です。


 続いてソマルタ/SOMARTA(廣川玉枝)。イッセイミヤケにいらした方ですね。無縫製ニットを使った服を得意とするブランドなのですが、ここでは「パニエ」という体型補正下着を使っています。パニエはスカートの下に入れて膨らませるためのもので、もともとは16世紀頃のスペインに登場した「ベルチュガダン」という鳥籠状の下着がルーツです。これもまたロリータ文脈ではお馴染みの部品なのですが、これを肩パットとしても使うことで、予想外のサイボーグ的なシルエットを生み出しています。下の作品はどう解釈したらいいのでしょうか。とにかくすごいです。


 ミントデザインズ/mintdesigns(勝井北斗、八木奈央)。下はケミカルレースの一種なのだと思いますが、よく見ると自社のロゴになっています。レースというと花柄という頭で凝り固まってしまいますが、こんな考え方があるのかと虚を突かれました。お二方のデザインはかわいらしい方向なのですが、いろんなモチーフが考えられると思います。ほかの服も実にさまざまなアイデアが詰まっていて、よくこれだけいろいろかんがえられるなと圧倒されます。お二方ともセントマーチンズ出身で、勝井さんはアレクサンダー・マックイーン、八木さんはフセイン・チャラヤンのアシスタントを経験しておられたとか。あふれんばかりのアイデアのルーツは、その頃の経験にあるのかもしれません。


 最後はリトゥンアフターワーズ/writtenafterwards(山縣良和)。今回の展示で最大の問題作だと思います。この展示、もはや服を見せるための展示というより、一種のインスタレーションになっていて、神戸会場だけで見られる作品です。手前に置いてあるのは有名なベルナール・フォコンという写真家が蒐集していたマネキン人形。独自の美意識に沿って蒐集されたため「フォコン・マネキン」と呼ばれています。その向こうに見えるのは、神戸ファッション美術館が収蔵しているロココ時代の服を着たマネキン群です。


 では、この大量の人形、前から見るとどうなっているのか。そこは実際に会場で実物を見てのお楽しみです。あっと驚く仕掛けがしてあって、ファッションとは何かというファッション論を語る展示になっています。出展しているデザイナーはほかに、アンリアレイジ/ANREALAGE(森永邦彦)、ケイスケカンダ/keisuke kanda(神田恵介)、まとふ/matohu(堀畑裕之、関口真希子)、ミナ ペルホネン/minä perhonen(皆川 明)、サスクワァッチファブリックス/SASQUATCHfabrix.(横山大介、荒木克記)、シアタープロダクツTHEATRE PRODUCTS(武内 昭、中西妙佳、金森 香)。4月1日まで、是非。

「感じる服 考える服: 東京ファッションの現在形」
2012年1月14日(土)〜4月1日(日)休館日:水曜日
開館時間:10:00 - 18:00(入館は17:30まで)
神戸ファッション美術館