平川祐樹さん
京都芸術祭MOVING、京都芸術センターの展示のみ拝見。京都シネマは体調よろしからず欠席。芸セン会場では平川祐樹さんの作品が非常に興味深い。自分がここ数年ずっと考えてる、美術と時間の関係が集約されてる。
京都芸術祭MOVING
5月3日(木)〜5月13日(日)、京都芸術センター
https://bitly.com/IvpOOi
平川さん(@you_hirakawa )はかつてほとんどJホラーじゃないかと思えるような、非常に心理的な怖さのある作品を作ってて、観客が悲鳴を上げるのを見たこともある。ポートフォリオをで見たものの中には布団の上に人形(ひとがた)の染みがある、という作品もあった。ところが今回はそうしたものとは(表面上は)まったく違って、非常に硬質の美しさをたたえた作品になっている。
いずれのアイデアもシンプルで、燃える蝋燭を撮った映像、水に濡れた木の葉を撮った映像の二つ。これがモノトーンで撮られているのだけれど、まるで星空のように見える。木の葉を普通に撮って星空に見えるってどういうこと? と思われるだろうが、それは実物を見てのお楽しみ。木の葉の作品も蝋燭の作品も、特にCG的な加工はしておらず、せいぜいモノクロにしたのと、あとはコントラストの調節くらいだそうだが、ちょっと信じられない仕上がりである。
平川さん自身は「これは一種の時計」と表現していた。そうであるなら、本作は西洋絵画にある「ヴァニタス」というジャンルに近いかもしれない。ヴァニタスとはまさに燃え尽きようとする蝋燭や砂時計といった「虚しいもの」を描く静物画の伝統。それにちょっと似ている。かつての彼のひとがたの染みの作品などもそうだけれど、要は彼の関心は何かの「痕跡」とか「時間の経過の積分された状態」に集中している。ある場合にはそれが霊的なものとか殺人現場の痕跡のように見えるし、今回のような美しい作品になることもある。
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で、こういう時間の痕跡、時間の圧縮された状態の表現って、実は美術のかなり根本的な問題に関わっているような気が、ここ数年ずっとしていた。平川さんは現在、海外に滞在中で、お会いするのは数年ぶりだったけど、なんか似たようなこと考えてるんだなと思って驚いた。たとえば私は以前、こんなテクストを書いている。
「美術作品というものについて考えていると、しばしばこの「時間」というものの奇妙さに突き当たる。美術は基本的には静止した表現で、時間をどこかでスパッと切ったり止めたり、圧縮したりしたようなものになる。ところがそれが表現として認められると、何百年も何千年も保存される。」(「美のパルマコン〈7〉 ポスト3・11状況を振り返る」、『TH』、2011年7月発売号)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4883751309
この発言と平川さんの作品がどうリンケージするのかは、長くなりそうなのでここには書かないけど、実際に作品を見てもらうと、なんとなくわかってもらえるんじゃないかと思う。是非会場へ、そしてついでに私のテクストも読んでもらえると嬉しいんだけれど!