大崎のぶゆき「Reversible Stories」
「Reversible Stories」、つまり「反転した物語」のタイトル通り、ネガポジ反転したイメージ。壁にかかっているのは一枚の風景画。ただし空は真っ黒、山はピンク色に描かれている。つまり本物の色とはネガポジ反転した色で手描きしてあるわけですね。おまけに技法を聞くと直接ドローイングしたのではなく、モノタイプという技法を使ってあるそうで。モノタイプというのは版に直接絵を描いて紙に転写する方法です。二重の意味で反転してるわけですね。
もう一枚はやはり風景画なのですが、こちらは風景画をそのまま展示するのでなく、絵を水かなにかに漬けて、それが溶けていくところを撮影し、その映像を展示してある。しかも映像をそのままスクリーンに映写するのではなくて、いったん鏡に映して映写してあるんですね。つまり映像そのものの展示ではなく、映像の鏡像が展示してあるというわけ。こちらもやはり反転しているわけです。
面白いのがこの映像を反射している鏡で、これが普通の鏡ではない。バイクのベスパが丸ごと一台、会場に設置されていて、このベスパのバックミラーに映像が投影されており、その反射が壁に映し出されているわけです。ふつうはバックミラーって、ドライバーが鏡に映った後方のようすを見るためのものですが、ここではその機能が反転している。反転、反転、また反転です。ほかにも会場でじっと長考してみたら、もっと幾つも反転が見つかるかもしれません。見てきれい、考えて楽しい展覧会です。
ちなみに大崎さんは現在、兵庫県立美術館で開催中のグループ展「現代絵画のいま」にも出品しておいでで、こちらも非常に美しい作品なので是非ご覧を。いずれも劣らず美しいです。
大崎のぶゆき「Reversible Stories」
2012年12月3日(月)〜22日(土) 12:30−18:30 日曜休み
ギャラリーほそかわ/大阪市浪速区元町1-2-25 A.I.R .1963ビル 3F