古墳は日本最古のランドアートだ!

 最近ツイートやブログのアップが少ないわけですが、一体何をやってるのかと言いますと、単行本の最後の仕上げをやっています。今度出る本は基本的に『TH』に連載した記事を中心にまとめてあるのですが、現代美術もサブカルチャーもごた混ぜの本で、ホラー映画とインスタレーション、コックリさんとアールブリュットの比較が並ぶといった具合の本です。ちょっと想像がつきにくいかもしれませんが、本当にそういう本になっています。で、その本のなかで非常に大きな核になるのが古墳の話です。で、昨日は追加取材と撮影に行ってきました。下は市野山古墳。デカイ!



 私はどういうわけか昔から古墳が好きで、古墳を見るとワクワク感が止まりません。たぶん原体験として諸星大二郎さんのマンガ『妖怪ハンター』があると思うのですが、自分でも理由はよくわかりません。基本的には現代美術の本なのに、古墳の話が核になるってどういう本なんだと思うかもしれませんが、これは大真面目に美術を考えた結果です。呪術性に注目して現代美術を考えるという意味では岡本太郎さんの土偶論に似てるかもしれませんが、あれともまたちょっと違います。


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 連載当時は古墳の写真なしで書いてしまったので、今回はちゃんと写真も載せたいと思い、古墳の撮影に行ってきた、というわけ。現代美術の本書いてるのに、平日の朝から古墳の写真を撮りに行ったわけですね。具体的に言うと近鉄「土師ノ里」駅のすぐ近く、古市古墳群というところ。駅を降りたらもう目の前に古墳が! ワクテカ感がもう止まらない!



 手前の芝生みたいになってるのが鍋塚古墳、その向こうの山みたいなのが仲津山古墳です。こんな感じで市野山古墳、鍋塚古墳、仲津山古墳、古室山古墳、赤面山古墳、古室山古墳、大鳥塚古墳、そして誉田山古墳、いわゆる応神天皇陵へと続きます。このほかにもまだまだあって、現存するものだけでも87基、もともとは123基もあったと言われています。なかには「登れる古墳」なんてのもあって、それが古室山古墳です。下の写真で私が立っている場所は、前方後円墳のくびれの部分。画面奥の盛り上がりが円墳の部分です。興奮する! 



 これだけ古墳があるわけですから、当然、一緒に埋める土器を作らなくてはならない。そういうわけでこの「土師ノ里」っていう場所の一帯には、土師、つまり土器を作る渡来系の人たちがいっぱいいたそうです。当時みやこのあった奈良と大阪のちょうど中間に、当時の最先端の陶器産業の拠点を作ったわけですね。しかも面白いことに、この古墳は実はすべてS字状に、一列に並んでるんです。しかも全部が上下互い違いに並んでるんですよ。



 なんだこりゃ? って思いませんか? コンセプチュアルでしょ? 良い意味で難解、しかもグローバル。以前、国立国際美術館で「風穴 もうひとつのコンセプチュアリズム、アジアから」という展覧会がありましたが、古墳はいわば古代に向かって空いた風穴なんですよ。さしずめ「古墳 もうひとつのコンセプチュアリズム、アジアから」という感じです。いやほんと、ネトウヨの人も土日にヘイトスピーチなんかしてないで、古墳に行けばいいと思いますよ。古代の土師ノ里にあった渡来人コミュニティーに思いを寄せてたら、狭苦しい排外主義なんか吹き飛びます。ゴミゴミした都会で人の悪口言うより、野山歩いた方が気持ち良いですし、古墳に立てば皇室への敬意も湧きますしね。



大きな地図で見る


 上の地図で見ると「道明寺」などほかの駅でもよさそうに見えますが、断然「土師ノ里」駅からのコースがお勧め。見事に古墳が並んでいるので、古墳伝いに歩いて行けば、そのまま誉田山古墳まで行けます。ちなみに土師ノ里から誉田山古墳までは、歩くと小一時間くらい。往復すると半日潰れちゃうので、時間のゆっっくりあるときにどうぞ。あと、自動販売機も何もない住宅街なので、水筒は必需品だと思います。


 古墳はマジで日本最古のランドアートだと思っているので、この仕事に一区切りついたら、アーティストや美術ファンと一緒に「古墳を見に行く会」でもやりたいと思っています。その節にはお気軽にどうぞ。あと、行ってみたいのがここ、五色塚古墳。土も全部剥がしちゃってて、これはこれでカッコイイ!

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