アート大阪
今回は直接売上に関係しないパフォーマンスが2件、インスタが1件あって、売らんかなだけではない珍しいフェアになっています。やっぱアートなんだし、そういう部分もないと、ね。以下に今回気になった作家を幾つか。
★名和晃平さん(ノマル)
やっぱり安定した出来栄え。多肉植物をアサンブラージュしてラッカーなどで着色した作品。前回の個展(見逃した)での出品作だとのこと。完成度の高さに唸らされる。しかし、どうして関西の公立美術館で名和さんの個展をしないのかなあ。人気も実力もすごいのに。ご関係者各位、是非よろしくお願いします。
★河合政之(Mori-yu)
ギター演奏によく使われる「フィードバック」という手法を映像に使った作品。音源、被写体、CGなどは何も使っておらず、テレビに映る映像をテレビに取り込み、それをまたテレビに……という無限の繰り返しを行うなかから生まれてくるノイズを見せる。「映像でマイブラをやるとこうなる」という感じ。
★寺村サチコ(橘画廊)
抜群に面白い。自分で染めたシルクオーガン製のソフトスカルプチャーなんだけど、イソギンチャクとかウミウシみたいな深海生物のようにも見えるし、女性器のようにも見える。昨年多摩美の院を出たばかりだそうだけど、非常に完成度が高い。来週まで個展だそうで、見に行くつもり。
http://sachikoteramura.jimdo.com/
★池田慎(studio J)
ブックカバーとか紙製のお皿とか、いろんなものに刺繍を施した作品。超絶技巧的にまたその刺繍が細かい。リンク先の《まいせん》という作品も、紙皿に刺繍してできている。伊藤存さん以来、刺繍を使う作家はどんどん増えてきてるけど、工芸的な完成度は毎年高くなってる気がする。まだネット上にあんまりデータがないようだけれど、早々に人気が出るんじゃないかな。森末さんにちょっと近い作風。
★森末由美子(ギャラリーほそかわ)
新作がすごい。どう見ても濡れた新聞紙に見えるんだけど、実はビーズという作品。いちおうリンクを貼っておくけど、この凄みは現物を見ないとなかなか伝わりにくいのじゃないか。完成までに2年くらいかかったという話で、すさまじい力量を感じる作品。
http://www.galleryhosokawa.com/
……というわけで、森末由美子さん、池田慎さん、寺村サチコさんと、いずれも繊維系の作品でしかも超絶技巧系。こういうのばかりに反応してるのは、これは自分が服飾の世界に関わってるせいか、それとも美術界の無意識がそちらにいま向いているからなのか。フェアというとどうしても「あんなのもあり、こんなのもあり」というお祭り状態になりがちだけれど、今回は珍しく方向性の見えたフェアになった気がする。やっぱり続けることは大事ですね。