あいちトリエンナーレ、やなぎみわ、ベーコン
あいちトリエンナーレ行ってきた。すごく意味のある展示だったんじゃないかと思う。おおむねの方向性は聞いてたけど予想以上。原子力の問題に対するストレートな意思表示が前面に出ている。実行委員会には経済団体なども多く名を連ねるプロジェクトで、これをやりきったのはさすが。中日新聞は原発報道でも歯に衣着せぬ論陣を張るところのようで、そうしたブロック紙の論調もある程度追い風になったのかもしれない。いま311以降の状況に沈黙してはいけないことを、これだけ雄弁に、大規模に語る企画はこれまでになかった。素晴らしい。
やなぎみわの公演も見てきたけど、気になったのは歴史認識の部分。終盤チェスと歴史が重ねられるけど、キングを取れば勝ちになるチェスと違って、現実の歴史はキングさえ取れば試合終了という具合にはいかない。千日手とはまた異なる意味で、私たちの歴史には終わりがないし、人間はチェスのコマではない。そこにもっと肉迫して欲しかった。
ベーコン展も行ってきたけど、最終日ですごい人の混みようだった。見応えあるだろうなとは思ったけど、ヘトヘトになった。ドゥルーズだったかが書いてたけど「肉」の問題を濃厚に感じた。性愛の対象としての肉、美的対象としての肉、神の受肉する肉、犠牲獣の肉……。スフィンクスもオイディプスの悲劇に関わる獣であることを思えば、彼が幾度もスフィンクスを書いていたことは興味深い。人と獣の間にあり、人間存在の謎を人間に問うては人の肉を食っていた化け物。まさに肉の獣だが、その肉を削り取ったような姿をベーコンは描く。
ベーコンの話を真面目に書くと何十枚も行きそうなのでやめとくけど、やっぱり描き手の肉体性を感じさせる筆触の強さが肝心なんだろうな、と思う。絵を通じて伝わる作家の身体のありようというか。とっくに死んだ作家なのに、ついさっき絵の具を塗り付けたような生々しさ。いや、筆触だけが問題なんじゃなくて、魂とか気持ちと言ってもいい。身体ごと心のありたけで、何かにぶつかっていく気持ちとか態度。そういうことが大事なんだと思う。ある意味、彼の作品くらい真っ正直なものはないと思う。教えられることが多かった。