谷澤紗和子さん、龍野アートプロジェクト2014
拙著『真夜中の博物館』でも大きくフィーチャーした谷澤紗和子さんの作品が、兵庫県龍野市で開催中の「龍野アートプロジェクト2014」で展示されています。ここ数年展開している切り絵/影絵のプロジェクトの新作で、かつて龍野市在住だった谷澤さんのおじいさんの話をモチーフにしたものです。
展示場所はかつてヒガシマル醤油の醤油蔵だったところ。谷澤さんのおじいさんは戦時中、敵機を照らすサーチライトを操作する係だったそうで、そうした物語の断片が散りばめられています。マトリョーシカのように反復される女性の形は、谷澤さんにまで至る血の流れなのかもしれません。
このシリーズのもう一つの魅力は、影。今回は展示場所がすきま風の入る醤油蔵なので、その影がゆらゆらと揺れるのも魅力の一つ。醤油蔵の歴史、地域の歴史と、作者である谷澤さん自身の個人的な歴史が、風に揺れながらクロスして影を投げかけます。谷澤さんの作品はサイトスペシフィックな場所での展示がよく似あうだろうなと思っていたので、今回の展示は本当によかったと思います。
ちなみに龍野市はそうめんとお醤油で有名なところで、ヒガシマル醤油の本拠地です。関西人は龍野市に足を向けて寝られないわけですが、街並みも大変美しいところで、市民の皆さんは美術や書画骨董に深い理解があります。今では珍しくなったレンガづくりの建物や漆喰の壁、板塀の街並みは本当に綺麗です。子どもの頃に帰ったような不思議に懐かしい気持ちになれます。
ちなみにアートプロジェクトの会場からほど近い喫茶店ガレリアでも、谷澤さんの小品が展示されています。こちらでは切り紙の作品のほか、最近始めた陶器の作品も展示されていますので、お立ち寄りの際には是非。このほか谷澤さんの作品は、六甲ミーツアートでも作品を展示中。さらに来週からは「はならぁと」の生駒宝山寺参道会場でも展示されます。ひとりの作家が同時に三カ所で展示というのも珍しいことではないかと思います。全部見て回るのは大変ですが、作家はもっと大変だったわけで、この機会に谷澤さんの作品を是非ご覧いただけたらと思います。
龍野アートプロジェクト2014 http://tatsuno-art-project.com/
ガレリア アーツ&ティー http://www4.ocn.ne.jp/~galleria/index.html
六甲ミーツアート http://www.rokkosan.com/art2014/artist/20140624_6572/index.html
はならぁと生駒宝山寺参道会場 http://hanarart.jp/2014/core/houzanji