「展覧会ドラフト2013 Project'Mirrors'」稲垣智子+高嶋慈+多田智美

 稲垣智子(美術家)+高嶋慈(批評家)+多田智美(編集者)の3名による共同プロジェクトというユニークな展覧会。言葉の人が二人も入るので、そういう言葉による演出、言葉による仕掛けがあるのかな、と思っていたら、そのあたりは意外に禁欲的というか、過剰な介入のない淡白な仕上がりでした。


 京都芸術センターは展示空間が南北に二つあって、ギャラリー北では作家自身による展示、ギャラリー南では批評家による展示が行われていたのですけれど、ギャラリー南の展示は手堅く作家の作品履歴をまとめた回顧展的な印象の展示。生真面目な高嶋さんの個性が出た感じがしました。多田智美さんの編集するカタログは会期終了後になるようで、こちらもどうなるのか仕上がりが楽しみです。


 作家の稲垣智子さんはちょっと人を食ったような作品で、松井智恵さんや初期の頃のやなぎみわを連想させる作家ですね。映像やインスタレーションを通じて、女性や身体のありようについて考えさせる。「不思議の国のアリス」なんかもちょっと連想させる作品です。ナンセンスなんだけど奥が深い、カワイイんだけど不気味でもある、そんな感じ。全員女性でキュレーションしたというのも頷ける感じがします。


 ちなみに私は、他の著名な批評家や編集者が同様のことをやったらどうなるか、想像しながら見ていたのですが、もし男性の批評家や編集者が同じことをやったら、善くもあしくも、もっと自己主張が激しくなって「俺が俺が」と主張しあうような、ある意味でどぎつい展示になったんじゃないかと思います。でも、今回の展示はそうではない。むしろ互いに一つのイメージを共有しあうような印象があります。「私たち一緒よね!」みたいな感じとでも言えばいいのかな。


 でも、よくよく目を凝らすと微細な部分でやはり食い違いがあって、相似性の中に微細な差異がある、みたいな印象を受けます。そうした女性同士の「相似性の中の差異」は稲垣さんの作品の中でも大きなテーマになっていて、そういう意味で展覧会全体と作品が不思議な呼応関係を持っている。面白い展示だと思いました。

「展覧会ドラフト2013 Project'Mirrors'」
稲垣智子(美術家)+高嶋慈(批評家)+多田智美(編集者)
京都芸術センター、2013年2月5日 (火) - 2013年2月26日 (火)
10:00-20:00 会期中無休
http://www.kac.or.jp/events/1470/

入澤あづささん、京都芸大博士展

 京都芸大博士展の後期展示。白眉は入澤あづささん。理屈抜き、文句なしに美しい。もうこれは説明不要ですよね。誰が見てもわかる。造形はウレタン樹脂、表面仕上げは漆、中心のモチーフは本物の貝。3Dプリンターなどは一切使わず、手作業で磨いているそうです。入澤さんは去年の卒展に出た作品もすごかったのですが、今年もすごかったです。



 よく見るとウルトラ警備隊のマークに似てるのは偶然かな? でも、サブカルチャーからのイメージの引用がどうのこうのとかいう話が吹き飛ぶくらい、作品そのものに説得力がありますね。一昨年に個展をやったそうですが、残念ながら私は個展を見逃していて、いまのところ彼女の個展を見たことがありません。早く個展が見たい方です。14日まで。


京都芸大博士展
第2期 2013年2月2日(土) – 2月14日(木)
会場:京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA
http://www.kcua.ac.jp/gallery/exihibition