「きょう・せい」@KCUA

少子化が進む中、多くの大学が都心部にサテライト校舎を作り、社会人向けの出前講義、アウトリーチを行っています。美大もまた同様で、都心部にサテライトのギャラリーを作り、自校の生徒の作品展示や、外部の作家を招いての企画展を行っています。一番最初に京都でこうしたサテライトギャラリーを始めたのが京都造形で、場所は三条木屋町にあり、名前を「ART ZONE」といいます。続いて出てきたのが京都精華大学で、こちらは「COCON烏丸」というビル内に「shin-bi」というスペースを設けました。

そしてここへ来てついに京都市立芸大と、京都市立銅駝美術工芸高校が、都心部にサテライトを設けました。正式名称は堀川御池ギャラリーといいますが、通称を「@KCUA(アクア)」といいます。場所は地下鉄東西線「二条城前」駅からすぐ。母体はいずれも京都市の公立アートスクールで、ついにここへ来て公立校までがアウトリーチ活動をやりだしたか、という感じです。先だってはそのオープニング展「きょう・せい」の内覧会にお伺いしてきました。

さすが学校が学校だけあって、非常に展示は強力なものでした。有名どころでいうと、岡本太郎賞受賞で注目の若手、若木くるみや、京都府新鋭選抜展最優秀賞の上田順平、元antennaの矢津吉隆、文化庁メディア芸術祭優秀賞受賞の岡本高幸が出品。いずれも京都ではかなりの注目株で、いずれも京都市芸の卒業生です。新人だけでこれだけの展示を組めてしまうというのが、京都市芸の底力なんだなと思い知りました。

このほか私が面白いなと思ったのは、ホッチキスの針やカッターの刃、金属部品などを組み込んで、漆芸を作ってしまう石塚源太。いっけん朝鮮風の螺鈿細工にさえ見えるのですが、実は現代の金属部品が使われている。この人の作品は非常に緊張感があり、これはすごいなと思いました。もともと市芸や銅駝が持っている、あまりに強力なアーティスト育成機能を、こうして目の前にしてしまうと、ほかの京都の私学の美大は大丈夫なんかいな、と不安に思ってしまいます。

もしこのギャラリーが市芸、銅駝のPR装置として構想されているのだったら、これはもう十二分にその威力を発揮していると思います。また、こうして公立校のアウトリーチが本格的に始まったことを踏まえると、私学の美大は何を目標に据え、何を発信していくべきなのか、もう一度原点に戻って考え直すべきなのではないか、とも思いました。そのくらいインパクトの強い展示で、まったく圧倒されました。必見です。

なお、「きょう・せい」の展示は前期後期にわかれており、前期は今月25日まで、後期の展示は5月1日から。次世代の関西の美術の担い手が次々に登場する「@KCUA」に注目です。

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京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA開館記念
京芸Transmit Program #1 きょう・せい

第一期 平成22年4月2日 (金)〜25日(日)
第二期 平成22年5月1日(土)〜30日(日)
開館時間 11:00〜19:00(入館は18:45まで) 
休館日  月曜日(ただし5月3日(月)は開館、6日(木)は閉館)
住所   京都市中京区油小路通御池押小路町238-1
http://www.kcua.ac.jp/gallery/

前期
Antenna、石塚源太、上田順平、岡本高幸、苅谷昌江、川野美帆、貴志真生也、田中英行、谷澤紗和子、宮永亮、矢津吉隆、若木くるみ、山下耕平

後期
芦田尚美、今村遼佑、岡田真希人、西上翔平、東明、藤井良子、前川紘士、水田寛、芳木麻里絵

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ART ZONE
http://artzone.exblog.jp/

shin-bi
http://www.shin-bi.jp/

@KCUA(アクア)
http://www.kcua.ac.jp/gallery/

若木くるみ
http://galleryjin.com/artists/wakaki_kurumi/index.html

上田順平
http://www.imuraart.com/ja_artist11_ueda.html

矢津吉隆
http://www.yazuyoshitaka.com/

岡本高幸
http://plaza.bunka.go.jp/festival/2006/art/000142/index.php

石塚源太
http://ex-chamber.seesaa.net/upload/detail/image/C0D0C4CDB8BBC2C04.JPG.html