谷崎由依さん来校

 私は大阪の専門学校で、主にライトノベル作家志望者のための文章講座を担当しているのですが、この授業では毎年一回、純文学関係の方をゲストにお迎えして授業をしています。一昨年は文筆家の千野帽子さん、昨年は作家の藤野可織さん。昨日は作家で翻訳家の谷崎由依さんをゲストにお迎えして、恒例の純文学の授業をしました。


大阪コミュニケーションアート専門学校
http://www.oca.ac.jp/creative/


  谷崎さんはもともと京大の美学の出身なのに、修論ではアルゼンチンのマジックリアリズム作家、ボルヘスをテーマに取り上げたという方です。そんなわけでマジックリアリズムには大変お詳しく、デビュー作である『舞い落ちる村』も、ラテンの魔術的リアリズムの影響の強い作品になっています。また、その後に手掛けられた翻訳でも、インドの民族対立やグローバリゼーションとの軋轢を幻想的に描いたキラン・デサイの『喪失の響き』や、やはりインドの化学工場爆発事故を神話のように描いたインドラ・シンハ『アニマルズ・ピープル』など、マジックリアリズム的な傾向の強い作品を手掛けられています。

キラン・デサイ『喪失の響き』
http://www.amazon.co.jp/dp/4152089059


インドラ・シンハ『アニマルズ・ピープル』
http://www.amazon.co.jp/dp/4152091932


 そんなわけで昨日の授業でも、ボルヘスガルシア・マルケス、ビオイ=カサーレスといった、南米のマジックリアリズム作家の名前が頻出して、ふだんマンガやラノベばかりの学生たちは目を回したのじゃないかと思います。ただ、こういう世の中のジャンル分けっていいかげんなもので、近年のラノベではメタフィクション魔術的リアリズムも何でもありの状況になってますし、宮崎アニメなんかもある意味で魔術的リアリズムの日本的展開といえそうな気がします。


 そんなわけで、いま話を聞いてわからなかった学生も、いつかきっと創作にどこかで何かの影響を受けるんじゃないかと期待しています。谷崎さん、ありがとうございました。