ウォルター・デ・マリア、ショーヴェ洞窟、ヘルツォーク

 ウォルター・デ・マリアさん、逝く。直島の巨大な大理石のインスタレーションで有名なデ・マリアさん。引きこもりがちな人柄で「作品そのものに語らせたい」と、インタビューも写真を撮られるのも嫌いだったらしい。60年代にバンドを組んでたときに担当してたのがドラムだったというのも頷ける。自分は直島のやつしか見たことないけど、あれは何万年もあとに発掘されたら、ラスコー洞窟の壁画みたいなショックを与えるんだろうな。20世紀の謎の神殿、みたいな感じになるんじゃないか。合掌。


直島とウォルター・デ・マリア http://trixieandflo.blogspot.jp/2011/10/chichu-art-museum.html
LAタイムズ追悼記事 http://www.latimes.com/entertainment/arts/culture/la-et-cm-walter-de-maria-died-20130725,0,1642854.story

 それでふと思い出したんだけど、フランスで見つかったショーヴェ洞窟の壁画ってのが、ラスコー洞窟の倍くらい古いらしいんだよね。で、その壁画のドキュメンタリーをヘルツォークが撮ってて、昨日wowowで見たんだけれど、その絵がすごくって、未来派みたいなの。


http://images.fineartamerica.com/images-medium-large-5/chauvet-cave-rhinoceroses-beverly-koski.jpg


 上がショーヴェ洞窟の壁画のサイなんだけれど、サイの角がいっぱい描いてあって、ツノを振り上げてるところを表現してるんだよね。下はイタリア未来派のジャコモバッラっていう人が描いたものなんだけど、これと同じ技法が使ってあるんだよ。何万年も前の絵なのに、未来派、あるいはアニメみたいな発想で描いてある。何万年も前に20世紀の先端表現をやってるんだよ。すごいと思わない?

ジャコモ・バッラ
http://www.pluto.dti.ne.jp/~hy-21c/skmt/dog_big.html


 あと、ショーヴェ洞窟の絵ですごいなと思うのが、ちゃんと面取りができてるんだよね。立体を線で囲うだけじゃなくて、対象を面で捉えてる。ブラシで描いたのか何で描いたのかわからないけど、筆触がちゃんと立体物の面を表してんだよな。日本人はいまだにこれが苦手で、輪郭線だけで描こうとする傾向が強いんだけど(アニメの絵とかがそう)、3万年前にちゃんとできている。セザンヌかよ! と。


 ヘルツォークがショーヴェ洞窟を撮ったドキュメンタリーは8月にも放送されるそうなので、興味をお持ちになった方は是非ご覧を。洞窟そのものの映像もすごいけど、強烈な文明批判にもなってて見応えありますよ。

世界最古の洞窟壁画 忘れられた夢の記憶
http://www.wowow.co.jp/pg_info/detail/103028/index.php?m=01