ボルゲーゼ美術館展

行ってきましたよ、ラファエロを見に、京都まで。

http://bor.exh.jp/

いくつか見所のある作品があって、その一つは申すまでもなくラファエロの《一角獣を抱く貴婦人》なんですが、これは現物を見た方が格段に良かったですね。印刷物だと、ほとんど茶色に見えてしまう女性の服が、実は鮮やかなワイン色の別珍で、その質感表現も実に見事。いや、これは良かったですよ。

あと、入ってすぐのところにベルニーニの彫刻があり、これはさすがバロック時代を代表する彫刻家の作品だけあって、凄まじいリアリティー。ベルニーニの才能を高く評価したパトロン、ボルゲーゼ枢機卿の彫像ですが、贅肉の盛り上がり、弛んだ皮膚の質感、シャツの襞の一つひとつまで、極限のリアリティーで描いてある。いや、これはすごいですね。これもやはり実物を見た方が良い。

それから、ボッティチェリの《聖母子、洗礼者ヨハネと天使》。これも大変素晴らしいですね(当然ですが)。日本にいるとそう滅多に見られないボッティチェリなので、これも見といた方が良いでしょう。キリストの表情が非常に人間的でかわいらしい。

あとはカラヴァッジョの《洗礼者ヨハネ》。これはなんとも不気味な作品で、よく見ると頭の形は歪んでいるし、胸の筋肉や腹の皮膚は、まるで老人のように弛んでいる。色調もなにか死体のように鈍い色合いで、暗闇には巨大な羊がのたうっている。非常に薄気味の悪い絵ですよね。

洗礼者ヨハネは、サロメに首をはねられたので有名な人で、イエスが登場する以前の先駆的な存在とされている人物。よく羊と一緒に描かれますが、これはまさに犠牲の羊であって、ヨハネの人生を象徴するものです。この作品はカラヴァッジョの晩年の作品だそうですが、殺人罪で逃げ回っていたカラヴァッジョが、これを描いて無罪放免を願ったというエピソードを聞くと、ひょっとするとカラヴァッジョは、洗礼者ヨハネに自分をなぞらえていたのかな、などと思います。もしそうだとすると、ちょっと傲岸不遜な発想と言うか、さすがカラヴァッジョだな、というか、なんとも不穏な気分になります。

その横にはカラヴァッジョに影響を受けたという画家の、ゴリアテを倒したダビデの絵が置いてあるのですが、これがまた凄まじいインパクトのある絵で、まぁ誰にでもお薦めできるようなものではないのですが、非常に薄気味悪くて面白い絵です。「怖い絵」が好きな方には、結構お薦めの展覧会かもしれませんね。