百均アート系

 ここ数日、真面目に原稿ばかり書いている。いま「もの派」と「モノ派」ということを考えているところ。ただし私のいう「モノ派」というのは「もの派」が出てきたごく初期に使われた綴りではなく、最近のインスタレーション作家のこと。具体的にいうと金氏さん、クワクボさんあたり。それとパラモデルとか。梅田哲也さんとかもそれに近いかな。既存の製品、日用雑貨なんかを使って作品を制作する人たち。こういう人たちをとりあえず「もの派」ならぬ「モノ派」と呼んで、そこから何か見えてこないかなと。


 こういう優れた「モノ派」はさておき、最近の美大生のなかには「とりあえず百均に行ってモノ買って並べれば作品になるだろう」と考える人が多いそうだ。自分でそういう例を目撃したことはないけど、美大生の仲間内では「百均アート系」なる言葉まで生まれているとか。誰もが百均に行ってしまうのは、たぶん材料費が安いからだろう。そうした状況が生まれてしまうのは、グローバル化とか国内のモノづくりの衰退とか、いろんなことが実は背景にはあって、そうした状況の方が現代アート的だな、と思う。


 安い材料と言えばかつて工藤哲巳さんは、タバコの吸い殻を拾ってきて作品にしたそうだ(結果そこにウジが湧き、あまりの凄さに捨てることもできず呆然と眺めていたらしい)。混ぜればゴミ分ければ資源、展示すれば美術作品だ。いっぽう菊畑茂久馬さんは、友人の歯科医に頼んで抜歯した歯を手に入れ、自分の作品に貼り付けて使った。これはこないだ実物を見たけど、なんというか凄かった。意外に「タダで手に入るもの」の方が「安くてに入るもの」よりインパクトがあるのかもしれない。百均アート系のみなさんは、そのへん考え直した方がいいかもしれない。