マンガはマンガ

Dan Kogai@dankogai
遅くともヨブ記には< @qua_gmaまどマギ」「フェイトゼロ」『Another』『ココロコネクト』みたいに、作中人物が不条理なルールに翻弄されるのを舌なめずりして楽しむみたいな悪趣味(…)が流行しだしたのって、いつからなんだろう。


 自分が子どもの頃に読んでたマンガって、超エグイのばっかだった。子どもがガンガン殺されたり殺したりするってのが普通だった。バイオレンスジャックデビルマン、アシュラ、漂流教室、灰になる少年、火の鳥鳳凰編、ブッダの最初の方、まだらの卵、地獄変、そのほかそのほか。最近じゃファーストガンダムでさえ「鬱展開」とか言われるみたいだけど、当時あれ見てた中学生の自分は「ぬるいな」としか思わなかった。「本物の戦争はこんなもんじゃないだろう」と。これは自分だけじゃなくて、あれ見て残酷だとかなんとかいう意見なんて聞いたこともなかった。


 なかでも、やっぱし忘れられないのは楳図かずおの『漂流教室』かな。未来の荒廃した砂漠のど真ん中で子どもたちだけがいる。一人が盲腸になっちゃうけど、医療器具も何にもないし医者もいない。しょうがないから子どもがカッターナイフで手術する。麻酔もなしに。そんなシーンが果てしなく続く。

楳図かずお漂流教室
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 日野日出志の『地獄変』とかも壮絶な話で、主人公がこの世の最後がやってくると予知する。で、家族にその地獄絵図を見せまいと、妻も子どももバットで殴り殺す。ところがそれは全部人形で、男は人形相手に狂った生活を送っていただけだった、って感じ。そのあと、さらに怖いラストの場面が続くんだけど、そこはナイショ。

日野日出志地獄変
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 でもまあマンガなんてカワイイもんで、毎年夏になると見させられた、原爆のカラー映像とかの方が怖かった。テレビをつけたら赤軍派のテロや公害病の犠牲者がガンガン映ってたし、今みたいにモザイクもかかってなかった。大人もマンガの残酷描写がダメなんて言わなかったよね。現実の方がよっぽどひどかったから。今じゃ何でもすぐモザイクだけど、このイチゼロ年代って自分の子ども時代の70年代と、ホントよく似た荒んだ時代だと思う。スーパーからモノがどんどんなくなった買い占め前後のこととか、子どもの頃のオイルショックの時代とそっくり。スーパーからトイレットペーパーや砂糖が消えたあの頃の、再生画像を見てるみたいだった。


 あの頃といまとどっちが良かったか。自分には正直よくわかんない。いたずらな残酷描写こそが素晴らしいとも思わんし、そういうのが消えれば良い社会になるとも思わんし。ただ人間の愚かさってのは、マンガの残酷描写がどうであろうが、それとは無関係に全然変わらんな、と思う。つか、昔より人間、バカで強欲で残忍になってるんじゃないかな。そういう現実にマンガが関係してるのかっていわれると、ほとんど関係ないと思う。マンガはただのマンガだよ。


 ……って、でも「されどマンガ」って思いもあるんだけどね。