「ゲンビ New era for creations – 現代美術懇談会の軌跡1952-1957」

 本日は芦屋市美博の展覧会「ゲンビ New era for creations – 現代美術懇談会の軌跡1952-1957」へ行ってきたのですが、思っていた以上に面白い、というかグッと来るものがある展示でした。「ゲンビ」ってのは50年代に大阪にあった「現代美術懇談会」の愛称で、狭義の現代美術以外に書や生け花、デザインと、実にさまざまな人々が集まったグループ。やられたのはその熱気でした。なんだろう、この熱気は。


 ゲンビに集まったメンバーには、のちに具体美術協会を立ち上げる人々が多いのだけれど、この展示を見てみると、具体の作品ってやっぱり「書」の影響抜きには語れないんじゃないかな、と思いました。このへん言い方すごく難しいのですが、ともあれ1954年の具体結成以前の1952年に、既にゲンビの活動って始まっていて、そこには「書」の作品がいっぱい出てた。のちの具体の人々が、この段階で書や生け花を見る機会があったってのは、やっぱり大きかったんじゃないのかな。特にウワーッと思ったのは書家の森田子龍の作品。今回の展示作じゃないけど、こんな感じ↓。

森田子龍《圓》
http://www2.ocn.ne.jp/~sin9695/clip_image002.jpg


 ほとんど文字としては機能していないけど、なんか迫り来る感じ、飛び出してる感じがしませんか。書なのに3D。しかも森田子龍の作品は、実際に見るとマチエール感がハンパなくて、墨汁がガチガチに固まってひび割れてる部分とかあるんですよね。墨を割ったり砕いたりして混ぜて書いてたんだろうか。支持体も紙を板か何かに貼り付けてるんだけど、これに皺とかがいっぱい寄ってて、そのマチエール感がすごい。モノそのものの迫力にぐいぐい引き寄せられる。具体に共通するものを感じます。


 あと、須田剋太さんの存在は大きいと思いました。もともと須田さんは森田子龍と交流があって、その縁もあったのかなあと思うのですが、そのへんの事情はよくわかりません。しかしこの時期の須田さんの作品のマチエール感は凄まじいものがあって、これも具体に与えた影響は大きいんじゃないのかなあ。須田さんと言えば『街道を行く』のイメージが強いけど、50年代の須田さんには全然違う顔があるんですよね。


 ほかにもデザインの世界から今竹七郎さんが出品してたり、あとの方のモダンアートフェアって展示になると、なんと松下電器の製品が出品されてたり(ジェフ・クーンズかよ!)。なんかすごい、すごいよね。いま同じことパナソニックに持ちかけて出品してくれるだろうかなあ……。ゲンビのメンバーは団体展とか書や生け花の流派に属してたけど、ゲンビではその背景を背負いながら、全員が他流試合でぶつかりあった。つまり、いわば異種格闘技戦なんですよね。いまの商業ギャラリーにこの熱があるか、な? と。


 と、まあそんなわけで、いまいち制作に煮詰まってて、クリエイターどうしの火花散る熱気のぶつかりあいみたいなものが見たい方は、芦屋市美博の「ゲンビ」見に行かれるが吉かと思います。なんか異様にテンション上がるよ。11月24日まで、是非ご覧を。

ゲンビ New era for creations – 現代美術懇談会の軌跡1952-1957
芦屋市立美術博物館
開催日:2013年10月19日 〜2013年11月24日
休館日:月曜日(ただし祝日の場合は翌火曜日休館)
http://ashiya-museum.jp/exhibition/exhibition_new/5355.html#more-5355