ウィリアム・ケントリッジ 《時間の抵抗》(〜03.16)

 元・立誠小学校でのウィリアム・ケントリッジ 《時間の抵抗》(〜03.16)、面白かったです。実はケントリッジってあまり関心なかったのですが、スチームパンクなイメージが前面に出た非常に面白いインスタになってます。円城塔さんが絡むのも納得。映像と立体のインスタですが、中央にどんと置かれているのは木製のクランクシャフトの群れ。蒸気機関を思わせる動きをしながら、等身大くらいの意味のない機械がガシャガシャ動いてる。映像は5面マルチでちょっとスペクタクル。


 映像はメトロノームが5面マルチに無数に映し出されるとこから開始。次第に各々のリズムがズレて複雑なリズムになっていくという、ちょっとコーネリアスみたいな展開。メトロノームという規範的なリズムを壊すことで、新しいリズムを作ろうというマニュフェストか。そんなメトロノームを押しのけるように、黒人女性ダンサー、ダダ・マシロのダンスが始まる。マシロは黒人ばかりで「白鳥の湖」を踊った南アフリカのダンサー。規範的リズム、イーブンなリズムを超えた身体の提示。


 映像にはいろんなイメージが入れ替わり立ち替わり現れるけど、何故かシャッペ式信号機が急に出てくる。これは19世紀のフランスで実際に使われてた通信システムで、フランス全土を結んだ通信網が整えられていた。シャッペ式信号機は典型的なスチームパンクアイテムだけれど、ほかにも意味不明な動力機械や手回しオルガンの楽譜のイメージなどが出てくる。動力と情報の結びつき、一定のリズムで動く動力機械と、そこから生み出される情報のイメージ。それと人間のナマの身体の対立。


 面白いのがそうした世界を一気にダイナマイトで吹き飛ばす、マッドサイエンティストみたいな人。この場面は1894年に実際にあった、アナキストによるグリニッジ天文台の爆破未遂事件がイメージ源。犯人は「天文台を爆破すれば時間が帰ってくる」と考えたらしい。いろいろ思うところあるけど、ともあれここまで。また続きが書けたら書きます。