京都嵯峨芸術大学卒展:李可嘉さん

 卒展シーズンですが、京都嵯峨芸術大学は政治的な作品が幾つか出てたのが面白いなと思いました。まずは版画分野の李可嘉さん。何重にも捩じれて意味が混線したような作品ですよね。一つに意味が決定できない。



 後ろの旭日日章旗は韓国のネチズンが見たら激怒しそうですが、それを背景に「竹」と書かれた大漁旗を持ってるパンダが描かれている。旭日旗大漁旗にも描かれることがあるので、そのことを皮肉っているようにも見えるし、背景が日章旗なので日本による竹島奪還の光景のようにも見えますが、その手前で大漁旗を掲げているのはパンダ、つまり中国生まれの動物です。


 これは「日本でも韓国でなく中国が竹島を取っちゃった」という意味か、それとも単にパンダは竹が好きだから竹の旗を掲げているということなのか。そもそも韓国は竹島という呼称を認めていないので、何重にも捩じれています。おまけに全体の構図は、米国人写真家のジョー・ローゼンタールが撮った《硫黄島星条旗》(1945)の構図を踏まえている。関係する国の国粋主義者は全員が怒りだしそうな作品ですが、全員が怒りだしそうという意味では平等で、ある意味平和の象徴のようにも見える。面白い作品です。



 李可嘉さんはこうした政治ネタの連作をいくつも出品しています。『LIFE』誌の表紙を飾ったので有名な、アルフレッド・アイゼンスタットの写真《勝利のキス》(1945)をもじったものもあって、この作品は《硫黄島星条旗》とともに森村泰昌さんの作品の元ネタになった写真なので、ひょっとすると森村さんに興味をお持ちなのかな、などと推察。何考えてるのか気にかかる方ですね。