高原英理さん短編「グレー・グレー」

今月の文學界に、高原英理さんの短編小説、「グレー・グレー」が掲載されています。



http://www.amazon.co.jp/dp/B001ETT96M/


ご存知の通り高原さんは「ゴシックハート」の著者であって、あれ、評論家じゃなかったの、と思う方も多いかと思いますが、実はそのごく初期の頃から小説をお書きになっていて、秋里光彦名義でホラー短編集を一冊上梓してもおられます。


http://www.amazon.co.jp/dp/4894568276/


そういうわけですので、今回もホラーです。が。これがせつないのよな。本当にせつない。あんまりネタをばらしちゃうと面白くないので読んでみて欲しいのですが、ある種のラブストーリーです。ものすごく暗いけど。それこそ大島弓子が全力でスプラッターを書いたらこうなるかな、みたいな感じの作品なんですよね。血まみれだが、かわいい。


書いててふと気がついたんですが、大島弓子ってものすごく死の匂いのする作品が多いですよね。突然死んだり、異常なスピードで老化したり。ちょっと宮沢賢治に似ているというか。「かわいい」という感覚には「子ども」がどこかで関わっていますが、その「子ども」特有の、残酷なメメント・モリの感覚がある。大島弓子にも宮沢賢治にも。


そういう「死とかわいさ」の接点を、表側から書けば宮沢賢治大島弓子になるし、裏側から書けば今回の高原さんの作品になるのかな、という気がしました。かわいさにどうしようもなく魅入られて死んで行く、という……。ある意味、トレヴァー・ブラウンやマーク・ライデンに近いかな。


というわけで、是非お読みになってください。著者自ら開設した、感想文書き込み用掲示板もあるよ。


http://www4.rocketbbs.com/442/graygray.html


追記


……実は今月の文學界は、ちょっとした幻想文学特集みたいな号で、このほか平山夢明さんのSFチックな短編とか、三宮麻由子さんの心霊論みたいなのも載ってて面白いです。個人的には中村文則さんの短編が面白かったですね。実話系心霊ものと不条理文学を足して二で割ったみたいな変な感じ。