モイズ・キスリング

 昨日行ったのは兵庫県立美術館「夢見るフランス絵画 印象派からエコール・ド・パリへ」。この展覧会はとある日本のコレクターの秘蔵の品を公開したもので、全部実は個人の持ち物。これだけ集めるのに一体いくらかかったんだろうと思うけど、所蔵者の氏名やプロフィールは秘密。近代美術の研究者が見たら「この作品がこんなところにあったのか!」と驚くものある(らしい)。


 とはいえ、私の読者はモネもセザンヌもお好みじゃないでしょうから、ここではキスリングに絞ってご紹介しましょう。下は《裸婦》(1941、部分)。全身は実はヌードで描かれているので、是非会場でご覧になってください。



 モイズ・キスリング(1891 - 1953)の魅力は不安定に歪んだデッサンと、猫みたいに大きくて霧のかかったような瞳。ポーランドの古都、クラコフ出身の作家だけど、そうした出自の人だからか、どこかちょっと変わってる。いわゆる日本人の考えるエコール・ド・パリのイメージ、マリー・ローランサンとかユトリロとかみたいな、微温的な画家たちの作風とはちょっと違いますよね。アンニュイで退廃的な感じがどこかにある。バルテュスなんかにも通じるところがあるかな、と。下は《若い女性》(1939、部分)。



 下は《魚のある静物》(1950)。いわゆる「台所の絵画」と呼ばれるジャンルの流れを汲むものだと思うけど、実際彼は17世紀のオランダ静物画に興味を持っていたらしい。いわば完全な時代錯誤なんだけれど、こういうものを描いちゃうのがキスリングだなあ、と思う。実はこの絵、魚のぬるっとした質感を出すのに、油絵の具の一筆書きに近い筆触で描かれている。ヌルッ、ヌルッと筆触が絡み合って魚になってるという不思議な絵。会場では近くに寄って、是非その筆触を確かめてみてください。



 キスリングはあんまり頻繁に展覧会の開かれる画家じゃないので、この機会にご覧になると良いかと。 このほかレオノール・フジタなんかもちょっと変わった作品が出てて、私の読者にはお勧めです。

「夢見るフランス絵画 印象派からエコール・ド・パリへ」
兵庫県立美術館、2014年 4月12日(土)〜6月1日(日)
http://www.artm.pref.hyogo.jp/exhibition/t_1404/index.html