高原英理さんの新作短編「ポエティック・クラッシュ」@『文學界』

ちょっとご紹介するタイミングが遅くなったのですが、高原英理さんの新作短編「ポエティック・クラッシュ」が『文學界』今月号に掲載されています。詩人が二人、公の席で討論をするのですが、実は実は……という話。冒頭から高原ファンならニヤリとさせられる出だしで、最後は爆笑。おそらく高原さん初のコメディーではないかと思います。

詩壇ではさっそく揣摩憶測が飛び交い、最近起こったあの論争と関係あるとかないとか、いろいろ噂が乱れ飛んでいるそうですが、私が読んだところ、おそらく詩壇の動向とは何の関係もありません。むしろ詩や文学だけでなく、演劇や美術など幅広い分野で見られるサブカルチャーとハイアートの対立、そこに焦点が当たっていると思われます。

なお、高原さんはご自身がそもそもサブカルとハイアートの二重性を帯びた人で、一方では幻想文学新人賞でデビューしたサブカル的出自を持ちながら、いっぽうでは群像新人賞でデビューしたハイアート的出自を持つというキャリアの持ち主。そうした矛盾した出自が、非常に良い形で結実した、山椒の利いた作品だと思います。自分もサブカルとハイアートを行ったり来たりなので、ほんとこの作品は身にしみますね。

ちなみに、来月も『文學界』には高原作品が掲載されるとのこと。ファンの皆さんはお楽しみに。