drowning room

★大崎のぶゆき
「drowning room」と題されたグループ展を見てきました。一押しはやっぱり大崎のぶゆきさん。大崎さんと言えば「溶ける絵」で有名ですよね。水性ペンで紙に書いたドローイングを水の上に転写して、それが溶けて行くようすを映像化した「water drawing」のシリーズ。私は以前、京都芸術センターで見たのですが、やっぱり非常に美しいですね。今回は映像作品のほか、スチル写真にしたものもあって、これもこれで大変美しく、非常に楽しめた展示でした。

今回は出品点数も多く、過去の作品も展示されていて、ちょっとした回顧展のような趣きもありました。私は初めて見たのですが、プラスチック製の靴や鉛筆を溶解させた立体作品のほか、いったん完成させたドローイングをワックスで覆ってしまい、うっすらと見えるだけの状態にしたシリーズなど、存在の「ある/なし」の中間状態に着目させる、大崎さんの姿勢が伺えて面白かったです。一度ゆったりと個展を見てみたい作家ですね。


★森本絵利
もう一人、今回非常に面白かったのが森本絵利さん。この方の作品は初めて見たのですが、非常に衝撃的です。遠くから見ると、ただのぼんやりした単色の絵にしか見えないのですが、よく見ると色むらに見えていたのが、全部極細線で描かれているのです。画面の上に落ちているホコリを、丁寧に隈取りしていって生まれる模様のドローイングなのですが、これがすさまじく緻密で、1ミリ以下の線ですべてが描かれている。

もう一つ彼女は面白いシリーズを作っていて、こちらは新聞の広告チラシなどを、正確に同じ大きさに切っていく、というシリーズ。一枚の広告チラシを半分に折って切り、また半分に折って切り、という作業を繰り返し、最後は完全な粉のような紙片になる。そのそれぞれの段階の紙片が、作品として展示されるわけですが、その段階それぞれに美しさがあって非常に良いんですね。

ただ、驚くべきことに森本さんは、この一連の細かな作業を、当初はまったく作品としてではなく、単なる手癖のようなもの、まったく無償の行為として行っていた、というのです。ここには一種、アウトサイダー・アートに近い、強迫観念的な「決定ルールの暴走」があります。それも、できやよいのようにアウトサーダーを模倣したものでなく、本質的に作り方がアウトサイダーのそれに近い。いわばアートというよりも、儀式的な行為の産物です。この人は面白い、と私は思いました。というより、非常に得難い個性が出てきた、という感じがします。


田中朝子
このほか、田中朝子さんという方も面白かったです。田中さんは関学出身だそうで、同窓の人間としては頑張って欲しいですね。非常に面白いグループ展でした。23日まで。


「drowning room」
神戸アートビレッジセンター
大崎のぶゆき、田中朝子、冨倉崇嗣、中川トラヲ、森本絵利
http://www.kavc.or.jp/art/aip/drowning/